第1章

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アイドル並みの智樹さんの人気にびっくりしてしまう。 群集の先の方で見え隠れしている智樹さんは、最初は戸惑っていたけど、そのうち慣れた様子で女子をさばいている。その中に由美ちゃんもちゃっかり入っていた。 そのスターぶりにため息をついていると、後ろから声をかけられた。 「あなた、鷹司先輩のご親戚なんですってね」 声の方を見ると、いつのまにか明日香先輩がそばにいて、同じように智樹さんたち群集を遠巻きに見ている。 「あ、はい、そうなんです。でもここまで人気者だとは知りませんでした」 目の当たりにして実感する。智樹さんとは住む世界がこんなにも違ったのだということを。 「元気そうで良かったわ」 明日香先輩は目を細めて智樹さんのほうを見ていた。こうやって明日香先輩と話をするのは初めてだった。 また智樹さんのおかげできっかけができてありがたい。それにしても。 「あの、お知り合いだったんですか」 懐かしそうにその美しい瞳を智樹さんに向けているところを見ると、ただごとではなかったのかもしれない。 あたしは少し胸が苦しくなった。 「ふふふ。もう時効だから言っちゃうけど、あたし一年のとき鷹司先輩に告白したの」 やっぱり……。 こんな学校一の美人に告白されて、断るわけがない。きっと二人はつきあっていたんだ。時効なんていうからにはもう終わったのかな。いや、もしまだ続いていたら……なんて、恐ろしい考えが頭をよぎる。 「だけど、きっぱり断られちゃった」 「え?」 あたしは明日香先輩の意外な言葉を聞いて、まじまじとその顔を見つめてしまった。 こんな素敵な人を振るなんて、なんて恐れ多いことを。他にもっともっと素敵な人とつきあってでもいたのだろうか。 「好きな子がいるって言われたのよ。他の誰が告白しても、同じ答えで、ぜんぜんなびいたりしないの。まいっちゃうわよね」 明日香先輩は苦笑してから、怒ったように言った。 「とっととその人と付き合ってくれればみんな諦めるのに、どうやら片思いだったらしいの」 「智樹さんが、片思い……」 「意外よね。今はどう?その人とつきあえたのかしら」 「いやあ、そのへんは、よくわからなくて……」 あたしは、愕然としながらもあいまいに答えた。
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