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(…すごい…ネフェルタリ様…) 我が主、ネフェルタリ様を改めて尊敬できる言葉だった。 貴族の娘は、それなりの政略結婚の道具とされることが多い。 だからこそ、娘には物心ついたときに婚姻は諦めだと教えられる。 ある程度の教養を強いられるも、精進する者はごく一部のみ。 あとは権力ある立場で自由奔放に生きる。 しかし、ネフェルタリ様はしっかりと物事を把握しておられる。 自国の不安定さ、他国からの侵略、王家に必要なものや、押すべき時と退くべき時を弁えておいでだ。 少しの間を開けて、ラムセス様が口を開いた。 「ネフェルタリ。」 「はい。」 「我が后は、愛情を持てると言うか。」 「はい。ラムセス様が愛をお持ちですから。」 「そうか。…お前はそれでいいのか?」 「…ラムセス様は、これから王妃様やご側室を持たれます。わたくしが口を出す権利はございません。」 「お前の気持ちを聞いている。お前はそれでいいのか?」 「申し上げられません。…わたくしはいずれ、政略婚をする身。蔑まれた者です。」 ネフェルタリ様のとても切ない気持ちが流れているようで、直視できないほど胸が痛かった。
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