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「はい、取りあえずこれでも飲んでなよ」
俺は今人選の岐路に立っている。目の前に出されたカップ。そこに注がれた液体を飲むか飲まないかという岐路に。
底が見えない程透明度の低い飲み物って何だ。湯気が立っていることから温かい飲み物だろうということは分かる。ここまでならいくらか飲み物の名前も出てくるだろう。コーヒーだとかミルクティーだとか。しかし、ピンクなのだ。カップにピンクの液体が湯気を立てて揺れているのだ。知っている人がいるなら教えてほしい。この真っピンクの液体はなんという飲み物ですか。
「味はわたしが保証するわ」
そう言って自分のティーカップに口をつける神様。
正直部屋中に止まらず自分自身までピンク一色で統一している人物の保証など宛てにしたくない。
しかし、好奇心には勝てないので、目の前に置かれたカップを手に取る。
匂いは紅茶だ。詳しくは無いので種類などは分からないが。
期待に満ちた視線が突き刺さっているので一口飲む。
「これは……」
コーヒーだ。ブラック無糖の。なんという香り詐欺。
「美味しいでしょ?」
ドヤ顔とはこういう顔のことを言うのだろうか。
「ふざけているのか貴様ァ!!俺は甘党だぁっ!!」
ちょっとイラッとしたので微動だにせず叫んでみた。
「知る訳ないじゃんそんなこと!!」
対する神様は持っていたカップを音を立てて置きながら怒鳴り返してくる。
「俺も自分が甘党だったとは思ってない」
再びカップの中身を一口飲む。やはり味はコーヒーだ。
「あなたの悪ふざけは一々相手してると胃腸に悪いわね」
「その見た目で胃腸炎は無いんじゃないか?」
「こんな見た目でもあなたの何百倍も生きてるからね。老化による身体の異常は不思議じゃないわ」
神様からそんな言葉は聞きたくなかった。
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