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「ところで神様。ここにこうして居るのが本当に俺で良いのか?この見る者を不愉快にしかしない紙切れは、本来別の人間へ届く筈だったわけじゃないのか?」
ポケットに入っていたぐしゃぐしゃの紙切れを取り出して見せる。ポケットの中にあったんだな、この紙切れ。生身じゃないから無いかもしれないと思っていたが、杞憂だったようだ。
「適当に落としただけだから、誰かが拾えばそれでいいやって感じで。ここに紙ごと持ってる人を移動させる時に持ってたのがあなた。だからここに居るのはあなたで、それもあなた宛てであってるの」
人間以外が拾っていたらどうなっていたのだろう。異世界に飛ばされる山羊とか見て見たい。あ、そうか、俺が人間以外の動物になればいいのか。なんか俺の体勝手に構築し直されてるらしいし。
「異世界に行くにあたって、人間以外の動物とかにはなれるのか?」
「また随分と唐突にぶっ飛んだこと言い出すんだね」
カップ越しの上目使いとは、ロリコンじゃなくてもなかなかの破壊力を誇るものなんだな。頭痛が無ければ俺もやられていたかもしれない。
「気分が悪くなってきたからな。もふもふの動物を思い浮かべて気を紛らわせていたんだ」
もふもふ感なら山羊より羊だな。
「出来なくはないけど……。あんまり時間無いから何になるのか早く決めてよね」
そう言ってカップを傾ける神様を視界の隅に入れながら思考する。
羊で歩き回ると確実に捕食者に食われて旅行一日目で異世界旅行から永遠にあの世へ旅立たなければならなくなるな。それでは異世界からやってきた動物(自分)が人間の街を闊歩する様が見れない。
「ここは捕食者であるサメで」
「何で魚類」
「やはり生物は命の源たる海に帰りたくなるんだよ」
「せめて哺乳類なら簡単だったのに……。もっと言うなら霊長類」
「選択肢が案外少なかった」
わざわざ椅子から降りて床に手を着く。
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