当選券、拾いました

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「俺、空から降ってくるのは電波っ子の美少女だけかと思ってたんだよね。突然超能力とか使う頭からつま先まで真っ黒の集団に追われながら、やっぱり超能力で迎撃してさ。見ず知らずの人間に助けてとか言っちゃうようなさ」 「二次元に毒され過ぎだろ」 ひらひらと降って来た紙切れを隣にいる友人と見ながら至極真面目に呟くと、阿呆かお前はと言う目をして言われてしまった。 「まあ冗談だけど」 「だろうな」 「……」 「……」 「これ、誰宛てだと思う?」 「キャッチしたのはお前なんだから、お前宛じゃないのか?」 「空から降って来たのにか?俺が素通りしていたら他の誰かが拾っていたかもしれないのに?」 「360度どこを見ても人っ子一人いないのにか?」 二人そろって紙切れとの真顔での睨めっこをやめて周りを見渡すが、視界には人どころか鳥の一羽すら入らない。 今俺たちが居るのは徒歩10分で鉄筋コンクリート製の建物がひしめく街中にたどり着けることが信じられないくらいに畑と田んぼに囲まれた、申し分程度に舗装された道路のど真ん中。道に沿うように造られた用水路は、自然を大切にした結果なのか、ただ単に工事するためのなんやかんやが無かったのか、土を掘っただけの簡単なものだ。街とは逆方向には大きいとは言えないものの山もある。 そんな緑あふれる、と言うか緑しかないような場所だから、人がいないのは当然といえば当然なのかもしれない。しかし、野鳥も見当たらないのは不自然過ぎる気がしなくもなくもない。 「生物を寄せ付けない結界かなんかでも張ってあるのか?」 「お前はどこのファンタジー世界の住人だよ」 「まあ、ありえないけど」 「だろうな」 再び二人そろって紙切れに視線を向ける。 「宛名見ればいいだけじゃん」 「そんな閃いた!みたいな顔されてもな。なんで気付かなかったのか不思議でならないぞ、俺は」 冷めた目で見られているような気がするが気のせいにして宛名を探す。
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