当選券、拾いました

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「……」 「見当たらないな」 表裏の隅々まで見て、日の光に透かして見るものの、新発見は無かった。ならば横ではなく縦に読んでみるが、やはり意味のある文にはならない。というか…。 「なんで中央揃えなんだよ!普通左揃えだろ!?意味もなく中央揃え使ってんじゃねーよ!かっこいいからか?かっこいいからなのか!?縦読みし辛いだろ!?」 「横読みなんだから縦読みし辛いのは別にいいと思うが…。何でキレてんだよ」 「何と無く気になったからと、ただの八つ当たり」 「そうか。……言ってもいいか?」 「……OK。もう諦めた」 なかなかにアクロバティックに紙切れを透かして見たり八つ当たりをしていた俺から、文字通り離れて赤の他人と化していた友人は再び俺の隣に並ぶと改めてまじまじと赤い紙切れを見る。 「突っ込みどころが多すぎて、どこから突っ込めばいいのか分からない」 そして、至極真面目に呟きやがりました。 「現実逃避をしていた俺が言うのもなんだが、全てこっちに投げるのは止めてくれないか?」 「さっきまで現実逃避をしていたんだから、丸投げしても良いと思ったんだ。それに、唯一のアイデンティティーを奪ったら可哀そうだろ?」 「それは俺の存在意義は突っ込みしかないと言ってるのか?」 「そうだ」 至極真面目に言い切りやがりました。 「冗談だ」 終始真顔だから分かり辛いことこの上ない。 「まあ、分かってたけど」 「だろうな。それで?どうする?」 真剣な表情で見てくるが、俺は分かっている。頭の中ではさっさと帰りたいと思っていることを。
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