当選券、拾いました

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ならばご要望にお応えしてさっさと胸の中に溜まったもやもやを一気に吐き出してしまおう。 「いやね、俺だってね、こんな紙切れにいつまでも付き合ってられないとは思ってるんだよね。でもさ、やっぱり気になっちゃうじゃないですか。何かに応募した記憶はないのに一体いつ抽選が行われ当選しちゃったのかとか、全人類から一体何人当選したのかとか、当選率分かんないから喜ぶべきか分かんないじゃんとか。そもそも異世界ってどこだよとか。剣と魔法のファンタジーの世界かなんかなのかとか、新たな疑問も浮かんで来るわけですよ。その上期間は未定とかアバウト過ぎだろとか。全てあなた次第とかぶっちゃけ過ぎというか考えるのが面等臭くなっただけだろとか。てか何で赤い紙なのに血文字風に書かれてるんだよ。同系色で読み辛いことこの上ないわ。☆とか付けても全然明るくなんねーよ。寧ろ不気味だわ。読ませる気無いだろ。こんだけ不気味さ醸し出してるのに印刷物とかさ、インクと紙の無駄でしかない」 間違いなくすっきりした顔してるな、俺。 「おおー。よくそんな気持ち悪いくらいすらすらと突っ込みが出てくるよな。しかも噛まずに。流石突っ込み基本装備なだけはあるな」 「そんな基本装備じゃ確実に物語序盤でリタイヤだな」 「突っ込みのいないボケほど空しいものは無いと思うんだが」 「好きでボケてるなら気にしないんじゃないか?突っ込み不在程怖ろしいものは無いとは思うけどな」 二人で遠くの空を眺めること数秒。 「で?一番気になってることは?」 「一番最初の疑問だからもういいやって」 遠い目で空を見ながら聞かれたので、同じく遠い目で空を見ながら答えてやる。 「……そうか」 「……ああ」 「……帰るか」 「……ああ」 ここにこの紙切れについての全てを放棄することを俺は宣言します。
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