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「どうするんだ?それ」
歩き出そうと一歩踏み出したところに聞かれたので、回れ右の要領で向き直る。
「プレゼントフォーユー」
「No thank you」
無駄に良い発音なのが腹立つ。
両掌をこちらに向けてお断りされたので、差し出していた手を紙切れごとポケットに突っ込む。
「お持ち帰りか」
「ポイ捨ては駄目だろ」
「両親に、見て見て!異世界旅行当たった!スゲーだろ!?とでも言うつもりじゃないのか?」
真顔なのに口調だけハイテンションという妙技を披露されてしまった。
「それはいいな。痛い子を見るような目で見られること間違いなしだ」
なのでこちらは無邪気な子供のような笑顔で平坦な口調という妙技でお返しすることにした。
「……帰るか」
言いようのない沈黙に耐えきれなかったので提案してみた。
「さっき俺が言ったな、それ」
何という事でしょう、まるでネタをパクられた芸人の様な目で此方を見てきます。
「ちなみにパーティーメンバーが賛同したのに引き留めたのもお前だ」
「俺のパーティーメンバーは物語序盤でリタイヤしてしまったから、今はいない筈なんだが」
とても不思議そうに小首を傾げて考え込んでいます。さっきから話してる相手は一体何なんでしょう。
「現在進行形で今まで誰と会話してたんだよ」
「守護霊だ」
「成る程。俺は物語序盤で死んだ後、お前の守護霊となって今現在に至る訳か」
「妙な紙切れを拾ったり、生前の基本装備を披露するだけで守ってもらった記憶は無いけどな」
「奇遇だ。俺も守護対象と生前と同じような会話をしているだけで、守ってやった記憶が無い」
ローテンションで盛り上がるという矛盾した会話を繰り広げながら畑と田んぼの間を進む旅人と守護霊。
なかなかに地味で面白みのないRPGが始まりそうだ。
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