1章 自殺願望

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先日、面接に行った会社から封筒が送られてきた。確認するまでもないのだが、敢えて乱暴に封を開けて中身を取り出す。丁寧に折られた俺の履歴書。そして、もう1枚の紙には不採用を告げる内容が書き込まれていた。 ――岡崎 俊明(オカザキ トシアキ) 34歳 無職 特筆すべき資格なし もはやフリーターとさえ言うに憚れる年齢。何度か職を転々とし、現在は書店でアルバイトを行っている。ぬるま湯のような環境に5年も浸かり、危機感を抱きつつ努力せず、その報いを受けている最中だ。同じバイト仲間は皆20代前半の、夢を抱いた大学生。店長さえ俺より年下で、周りから気を遣われる存在となっている。 バイト自体は一生懸命こなしてきた。会社から接客能力の高さをかわれて表彰された事もある。お客様からの評判もいい。だが、それら全て無駄な努力だったと痛感された。 店長に「正社員へステップアップ出来ませんか」と訊ねたのは数か月前。働き如何ではバイトから社員へ昇りつめた者もいると聞いていた。しかし。 「前までは、そのような制度もありましたが、現状は……すみません」 目を逸らしつつ、あっさりと断られてしまった。その日を境に、俺は寝付けない夜を過ごす事となる。
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