1章 自殺願望

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3年以上付き合っていた女性から別れを告げられたのも同時期だ。付き合い始めの頃に大学生だった彼女も無事、就職を成功させる。彼氏として喜ぶ反面、一回り近く年下の彼女に先を越された事は、胸に鉛を沈められたような気持ちだった。醜い中年男の嫉妬である。 彼女は「仕事で色々と覚えなければいけない事が多くて、なかなか連絡をとる事が難しい。しばらく1人にさせて欲しい」と言ってきた。気持ちはよく分かるつもりだったので、俺はそれを快諾して数か月もの間、電話もメールも絶った。 彼女の誕生日。俺は悩みつつもメールを送る。『誕生日おめでとう。仕事はどう? 体調崩してない?』返信は3日後にやってきた。 『好きな人が出来たから、もう連絡してこないで欲しいの。ごめんね』 「分かった。こんな俺に今まで付き合ってくれてありがとう」と精一杯の強がりを文字にして、彼女がくれたメールや電話番号等を全て消去する最中、涙が零れそうになる。彼女を恨みはしない。全ては俺が悪いのだから。
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