1章 自殺願望

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悪い流れを断つべく、休みの日はハローワークへ足を向ける。今まで何度も通っていたが、他にいい会社があれば面接してみよう位の意気込みでしかなかった。睨み付けるようにPCの画面を見つめ、自分の年齢でも雇ってくれる会社を探す。そして見つかれば直ぐに面接日をこぎつけ、会社へ向かった。 「今まで何してきたの? バイト? 職務経験がこれではねぇ……」 「地元にこだわる事もないんじゃないですか?」 「車の免許のみ……え? ペーパードライバーなの? 困ったなぁ……」 もう何社断られたか覚えていない。重い足取りで自宅に戻ると、携帯が着信を知らせた。液晶画面に、母と表示されている。 『お父さん、今日無事に退院出来たからね』 1か月前、父親が突然自宅で倒れた事を聞かされた。どうやら心筋梗塞だったようで、一時は命の心配もされていたが手術は成功。 術後、病室で眠っている父親の元に親戚一同が集まっていた。重苦しい空気を変えるべく、小さな頃によく遊んでくれた叔父が俺に話しかけてきた。 「仕事が忙しいかもしれないが、両親をちゃんと支えてあげなきゃいけないぞ。ところでお前、今は何の仕事してるんだっけ?」 何と返せばいいか悩んでいると、傍で話を聞いていた母が口を挟む。 「営業の仕事してるのよ。1人でちゃんと御飯食べてるか、心配でね」 俺を気遣う優しい嘘なのか、事実を隠したかったのか……それは分からない。ただ理解出来るのは、自分がどれだけ親不孝をしているかという事。
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