1章 自殺願望

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ある日、いつものように書店で働いていると気になる本を見つけた。 【自殺マニュアル】という書籍である。20年以上前の本で、中古本を扱っていないウチの店には普段置かれていない物。ならば何故ここにあるのかと言えば、お客様の注文により出版社から送られてきたからだ。 気になったので、いけないと思いつつページを数枚めくってみる。死ぬ方法が何種類か項目で別れており、必要な道具や手順が分かり易く記載されていた。 注文書を確認してみると、購入希望者が女性である事に気付く。あどけなさの残る可愛らしい文字。恐らく未成年だろう。 若い身空で、このような本を読む理由は何なのか。興味本位ならばいい。しかし本気で自殺を考えているのだとしたら……理由は何なのか。 真っ先に思い付くのは、イジメ。一部の女性は徒党を組み、気に入らない相手を淘汰する。実際この書店でも、そんなグループが何組か出来上がっていた。 過去に起こった事を例にあげれば、新しく入った女性スタッフにAグループのボスが声をかけた。休憩時間、一緒に食事しないかという誘いである。しかし新人女性は1人で落ち着いて食事がしたいからと断ってしまう。するとその日から新人の悪口が女性スタッフ内で広まった。仕事について教えてほしいと声をかけても全員で無視。あっという間に女性は孤立した結果、2回目の給料を貰う前に辞めてしまった。 思えば、このようなカーストは小学校時代からあったような気がする。学校も社会も、力を持つ者が絶対。弱者はいずれ淘汰されるという事なのだろう。
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