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今まで渡り歩いた学校でも同じようなことが何度かあり、最初こそ助けを求めて視線を彷徨わせたものの、どの場合も全てガンスルー。ひどい時にはさらに煽る者までいた。
そんな経験のある転校生は、周りに助けを求めることなく、どうやってこの場を上手く切り抜けようか、と必死に考えた。
というよりも、どうやって早く『コト』を済ませられるか考えた。
転校生の唯一の懸念は、ようやくお昼休みを一緒に過ごす友人のような人ができたのに、それを台無しにしてしまうのではないか、ということに他ならない。
つまり、これを早急に終わらせ、なんとか昼休みの間に離れの塔へと行くためには、彼らの言う『学校案内』に乗るのが一番なのだ。
勿論、身体を張って。
「わ、わか……りました。……行きます」
「おー。いーねーわかってんじゃーん」
「物わかりの良い奴は好かれるぜー?」
「俺らいい『オトモダチ』になれそうだなー」
馴れ馴れしくも肩を組み、ニヤニヤと転校生にボディタッチする男子生徒。彼らの関係を知らない者が見れば本当に仲良く見えるかもしれない。
が、教室内にはそんな人間はいない。転校生を中心にしてゆっくりと歩きだし、クラスメイト達は道を譲る。
痛いのは嫌だなぁ……でもこれが手っ取り早いしなぁ……、と半ば死んだような目で彼らの歩行に合わせて教室の扉へと歩く。
男子生徒の一人が扉に手をかけ、スライドさせようとした―――その時
『萌ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!はぁ~~~~~もうっ、あれっ、無理っ、いやほんと無理っ、尊っ、尊みが深すぎてっ、あのっ、あれっ、これっ、ふぅ~~~~~~~、無理っっっっ!!!!』
―――教室のスピーカーが、爆音を放った。
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