転校生とは一種の属性である

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なぜ僕がこんなに緊張しているのか。 それを簡単に説明するのなら、僕がいわゆる『転校生』だからだろう。 生まれ育って早17年。自由奔放すぎる父と母により幾度も無く転校を余儀なくされた僕が唯一慣れることが無かった、最初の挨拶。 覚えているだけでも十数回。そしてついに両親から告げられたのがあの言葉である。 『そうだ、しばらくはここにいるからちゃんと友達を作ろうな』 『え……しばらくって?』 『父さんの仕事が一段落したからなぁ……まぁお前が大学を卒業するぐらいまではここに居を構えているつもりだ』 これが完全に重荷になっている等とまったく思っていないだろう父の発現により、慣れることのなかった挨拶がさらに憂鬱になったのは言うまでもない。 これまでだって緊張で失敗を繰り返していたのに、である。 そして次に浮かんでくる言葉、それだけが僕の唯一と言ってもいいほどの落ち着く、そしてとめどない安楽の言葉となり、最早トレードマークともいえるほどの定型句。 「はぁ……逃げたいなぁ」
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