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彼の絶賛攻略対象である『妹系教師』に夢中になるあまり、彼は気付くことが出来なかった。
リアルでの担任の先生が、女神のような微笑みの爆弾を、デビルバットゴーストばりのタッチダウンで決めようとしていることに。
☆
定番のチャイムがお昼を告げる頃。
下級生のある教室はざわざわとしていた。
廊下を行く生徒たちに違いはないものの、教室の中では、あまり目にしたくはない、よく見る光景が映し出されていた。
「え、あ、いや、あの、僕は用事があるので…」
「えー?なにー?小さすぎて聞こえないんだけどー」
「だからさー。俺たちが学校内を案内してやるって言ってんじゃーん」
「人の親切を寿限無するとかありえなくねー?」
それを言うなら『無碍にする』だろう。そんなツッコミを入れれば「は?意味わかんねーんだけど。文句あんの?」と言われること請け合いなため、誰も訂正はしない。
つい先日の担任のいらない提案により、コトは起こるべくして起こった。
『転校生もまだ二日目だ。わからないことも沢山あるだろうから色々と教えてあげろよ』
もしかしたら平穏に過ごせるのでは、という転校生の未来予想図を最悪の未来予想図Ⅱにしてくれたあの言葉。
それを親切にも、このクラスのトップカーストが遂行してくれている最中だった。
「ありがたいんですけど……僕にも予定が―――」
なんとか断ろうとする転校生だったが、「あぁ?」という男子の言葉に「……いえ」と縮こまってしまう。
身長は平均的にある転校生であるが、男子が二人に女子一人と、数の上でも圧力の違いでも負けており、成す術が無い状態だった。
もちろんクラスメイトが助けてくるなどということもなく、皆横目で見る程度で、我関せずといった状態。必死に内輪で盛り上がり、何も聞こえていませんよ、と自己防衛に努めるグループがほとんどだった。
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