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「僕の行動を監視している奴らだ。不満があっても、僕のことを恐れて迂闊に手が出せないのさ」
「どうして?」
彼の言葉に女はベッドから這い出ると、ゆるりと首へ腕を絡めて訊ねる。鼻先にかかった女の長い前髪を指先で鋤いた彼は、茶色い双眸で見つめ答えた。
「その気になれば、触れたもの全てを壊してしまうから」
「触れたもの……全て?」
「ああ」たった一言肯定の笑みを浮かべた彼は、女の発言の意図を汲み取り唇を重ね、再度懇ろとなる。
女はベッドの上で色のついた息を漏らし、彼の首へ指先を伝わせる。指の間からは【S‐*】の刻印が覗く。
窓の外では、黒地に青い光沢の翅を持つ蝶が一頭游いでいた。
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