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――20XX年 1月上旬。
突如生じた爆音が施設の壁を突き破る。
木霊する無数の叫喚、立ち込める粉塵と共に、けたたましい音で辺りに鳴り響く警報器。
「現れたか……」
襲い来る風圧に、金髪の男は身動ぎもせず一点を見据え、低く呟く。
夜半過ぎの静寂と石造りの壁を突き破り、現れた1人の青年。しゃがみ込み、両手をついた状態からゆっくりと立ち上がる。
淡く光を帯びた翡翠と薄紅、左右非対称な2色の瞳で眼下に立つ20代後半くらいの金髪の男を見据える。
粉塵立ち煙る中、茶色の髪を棚引かせ彼は言った。
「こいつは返してもらうぞ。クラウス」
前方へと突き出した彼の右手の内には、銀色の小さな丸い装置が収められていた。冷たい輝きを放つそれは、ぷつりとチェーンが切れている。
細やかな細工の施された銀色の基盤、そこにはアルファベットで小さく【Guernica】と刻印されていた。
彼は瞑目し、そのうちのひとつに意識を集める。するとそれは手の内で眩い光を放ち、薄紅色の刀身が形成された。
「咲羅!」
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