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自身と名を同じくするさくらが、石造りの建物の外にある車から身を乗り出して呼びかける。
「兄さん、こっち!」
次いで呼ぶのは、2歳違いである彼の弟、想良。咲羅は黙って後方の2人に視線を送り、了承の意を示すべく頷く。
「また会おう」
咲羅は振り返りざまに一言、これが最後でないと含みを持たせた台詞を告げた。
クラウスと呼ばれた金髪の男は、苦々しい面持ちで口の端をつり上げ、階下から彼を見上げる。
「ああ、またいずれ」
その言葉を横目に聞いた咲羅は、口の端に不敵な笑みを浮かべて壁の外へ姿を消す。
駆けつけた警備隊が、後を追い銃を構える。だが彼はそれを追うなと牽制し、再会を予期するかの如き期待に満ちた眼差しで見送った。
――彼らがこうするに至った理由。その経緯を語るには、およそ3ヶ月前にまで遡らねばならない。
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