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――午後3時49分。
咲羅たちと別れたナタリアは、目的地へ向かう列車の中にいた。
「なぁ、ナタリア。君、まさか本気になったりしてないだろうね?」
咲羅とのやり取りを見ていたのだろうか。目の前に座ったクラウスが、口の端をつり上げて問う。
「……そんなこと、ないわ」
一言吐き捨てそっぽを向いた彼女の褐色の瞳は、窓の外に流れる景色を映す。そして、一時の間を置き「だって」と言葉を繋いだ。
「私たちにはお互いしかいない。血は繋がらなくても、私たちは2人きりなんだから」
窓際に置かれた彼の手に、自身の指先を重ねる。
小高い山々が連なる窓の外、澄みきった青空には、鳶が2羽、その大きな翼を広げ悠々と旋回していた。
それを目にしたナタリアは、初めてクラウスと出会った日のことを思い出さずにはいられなかった。
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