第九章

8/41
前へ
/293ページ
次へ
どれだけ、伝えれば、分かってくれるのだろう… そればかり、考えていたから、気付くのが遅れてしまった。 胸を強く押される。 いや、実際は、それほど強くなかったはずだ。 しかし、ベッドへ沈みこんだのは、病み上がりの身体。 その隙に、綾が、腕の中からスルリと、抜け出し、立ち上がる。 「コウが、手を抜いて仕事出来るようになったら、考えるわ」 そう言って、ドアを開け、走って行った。 パタパタパタ 後に残ったのは、走り去る音。 廊下に反響している音だけ。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加