第十章

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そう、言って席を立って、店を出た。 明日、旅立つ。 もう、末次さんと会うことも、ないだろう。 もちろん、コウにも。 遠いフランスの空から、あなたを想ってます… なーんて、言って見て、自業自得。 ただの自己満足しかなくて。 病院で、 『離したくない』と、 抱き締められたけれど、遠く離れたらどうなるか分からない。 最後に、あの海に別れを告げたかった。 それだけが、心残り。 空を見上げると、星があまり出ていなくて、あの夜の海を思い出す。 「はぁー」 ため息が、多くなった。 ぺちぺち、と、自分の両頬をたたいて、カツを入れる。 新しい扉が、開かれるんだ。 期待だけを胸に、旅立とう。
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