第十章

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「忘れてなんかやるものか」 ぎゅっと、自分の存在を刻みこむように、抱き締める力を強くする。 「オレは、意地悪だから、覚えておくよ。 オレのために、身を引こうとした婚約者をね…」 気が付くと、左手を持ち上げられていた。 「な…に、言ってるの…? 婚約者って」 は…? 薬指に、キス チュッ あまりにも、華麗なしぐさで、言葉を飲み込む。 リップ音を響かせると、抱き締めている手を解いてスーツのポケットから、何を取り出した。 すっと、滑らせる。 左手の薬指に
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