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「忘れてなんかやるものか」
ぎゅっと、自分の存在を刻みこむように、抱き締める力を強くする。
「オレは、意地悪だから、覚えておくよ。
オレのために、身を引こうとした婚約者をね…」
気が付くと、左手を持ち上げられていた。
「な…に、言ってるの…?
婚約者って」
は…?
薬指に、キス
チュッ
あまりにも、華麗なしぐさで、言葉を飲み込む。
リップ音を響かせると、抱き締めている手を解いてスーツのポケットから、何を取り出した。
すっと、滑らせる。
左手の薬指に
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