第十章

29/46
前へ
/293ページ
次へ
ぼーっと、していたら、私の前に誰かが立っている。 「あ、ごめんなさい」 気づかないうちに、彼女が私を探してくれたんだ。 そう思って、勢いよく顔を上げると… そこには、富田部長の彼女ではなく、コウが、満面の笑みで立っていた。 「えっ?コウ?」 次の瞬間、ぎゅっと、抱き締められていた。 驚きのあまり、言葉が出ない私。 「会いたかった… 綾」 なぜ、ここにいるの?フランスまで。 温かな腕の中、厚い胸板に押しつけられている。 そこからは、ドキドキと、少し早めの音が聞こえている。 コウも緊張しているのかもしれない。 そう思ったら、笑みがこぼれた。 完璧な彼が緊張するなんて…
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加