第十章

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「綾のことだから… 簡単に会ってくれそうもないだろ? 富田部長に訳を話して、協力してもらったんだ」 富田部長は、そう言えば、コウの大学の先輩だった。 「社長がこんなところまで、来ていいの?」 会えてうれしい。 そう、素直に言えない、ひねくれものの私。 「社長は、ヨーロッパ視察旅行だから、いーの!!」 自らを 『社長』と、呼んで、茶化している。 本当にいいのかな? そう、深刻に考えようとするうちにコウが、抱き締めている腕をゆるめて、右手を握ってくる。 「え?コウ…」 「綾、お腹すいたから、メシ食べに行こう」 そのまま、引きずられるように空港をあとにした。
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