第一章

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「社長…」 遠慮がちにノックする音… 「どうぞ」 顔も上げずに、返事をする。 この案件をもう少し、詰めておかないと… 「社長…もうそろそろ帰られたほうが…」 「あ…」 左手首に目をやると、もうすぐ日付が変わろうとしていた。 親父の秘書だった末次 誠【スエツグ マコト】さん。 今は、オレの秘書になってもらっている。 一見、冷徹に見える細い銀縁眼鏡。 なでつけられた黒髪。 若いのに 有能な秘書… オレより、2歳 年上の32歳。 出来る人… いきなりの社長業に戸惑うことばかりだったのに、末次さんのおかげで、なんとか、こなせるようになってきた。
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