第2話

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「はぁ………」 女性が会社で逃げ込むと言えば、トイレが一番の打って付けで。 意味もなく手を洗い、鏡に映った情けない顔をした自分を見て………溜息しか出なかった。 ちょうど一ヶ月前のバレンタインデーに、私は真田主任に告白された。 思いもよらぬ人からの告白にその時は少し………いや、かなり舞い上がっていたと思う。 次の日のバレンタインデー当日、私たちはデートをした。 というか、真田主任からデートをすることを強要されたというか……。 『もっと俺のこと知ってほしい』 真剣な眼差しで、あのイケメンにそう言われたら断れるはずもなく………。 完全に私は舞い上がっていたんだ。 その日は初デートだからと、とりあえず映画を観に行った。 その待ち合わせに真田主任が15分ほど遅れてきたのは、先述の“ツワモノ”と遭遇したからだそうだ。 それでも、初めて見る真田主任の私服姿に目を奪われた。 たどたどしい私をスマートにエスコートしてくれるところとか、仕事中には見せないはにかんだ笑顔とか、触れることのなかった真田主任の意外な一面のオンパレードに……… 私は確実に舞い上がっていたとしか、言いようがない。 それから、仕事の終わりの時間が合えば夜ご飯を一緒に食べ、休日は何かと理由を付けて真田主任に連れ出された。 手を繋ぐこと以上のことはしていないけど、それなりに私たちの距離は近づいたと思う。 あの人に振られて地底のどん底を這っていた私を青空が見える場所まで持ち上げてくれたのは、真田主任に間違いない。 先程の胸の痛みを思い出す………。 あの女性に申し訳ないとか、昔の自分を思い出すとか。 そんな言い訳を並べてはみたけど、理由はもっと違うところにあるって、自覚した。 真田主任と他の女性が仲良くしているところを見るのがただ辛かったんだ。 「………社内恋愛、向いてないな………やっぱり」 舞い上がっていた私は、やっと地に足を付けて現実を見始めた。
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