第2話

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元の席に戻るのが気が重い…。 まだあの女性は真田主任のところにいるのだろうか。 真田主任が他の女性と一緒にいるところを見たくない。 また一つ溜息を吐いて、トイレから出た。 自席に戻れば、もう先程の女性はいなかった。 そして、先程と同じようにパソコンを広げたままの真田主任はまだそこにいた。 そのことにホッとしつつも、精神的な疲れがどっと体中にのしかかってきた。 ………今日はもう帰ろうかな。 本当は今夜も真田主任と一緒にご飯を食べる約束をしていたのだけど………。 私の仕事も一段落しているけど、真田主任はまだかかりそうだし。 早く自宅に帰って頭を冷やそう。 冷静になって、真田主任のことを考えてみよう。 会社から出てから、真田主任には今夜のキャンセルのメールでも打っておけば大丈夫だろう。 「………お先に失礼します」 机の下のバッグを持ち上げ、チラリと隣を伺うと………。 「───ぅっ!」 バッチリ真田主任と目が合って小さく唸り声が出た。 しかも真田主任はジーッとこっちを見ている。 「………あ、後でメールします」 黙って出て行けそうな雰囲気でもなく、小さく真田主任にそう告げて立ち上がった。 ………が、真田主任に腕を掴まれてしまった。 「ちょっと待ってて。俺ももう終わるから」 「………いや、でも………」 「すぐだから。  それになんか十和田、直帰しそうな感じがする………」 ギクッ。 真田主任の推理に、分かりやすく身体が反応してしまった。 「………5分で終わらせる。会社の入り口で待ってて」 有無を言わさぬような視線に私はただ頷いた。 「絶対、先に帰るなよ」 そう念押しして、真田主任はサッと私から視線を逸らすと急いでパソコンの打ち込みを始めた。 ………逃走失敗。 私はトボトボと会社の入口へと向かった。
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