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そう言われて俯いたまま考える。
「真田主任自身はとても素敵な人だと思います。
見た目もそうだけど、優しくて………。
だから私じゃない人の方が………」
「そうじゃなくて!
十和田は俺の事、好き?」
単刀直入にそう聞かれ、たじろぐ。
好きか嫌いかと問われれば………好きに決まっている。
ここ一カ月ですっかり心の中には真田主任が入り込んでいた。
でもそれを伝えることができずに私は論点をずらした。
「………やっぱり私、社内恋愛には向いてないです」
今日、真田主任と女性が一緒にいたことで抱いた黒い気持ちは完全に嫉妬だ。
そんな場面、これからいくらでも目撃するだろう。
その度に焼きもちを妬いて、不安になって………そんな自分が簡単に想像付く。
「同じ部署で隣の席同士で付き合うとか、周りも気を遣うじゃないですか。
からかわれたり変に気を遣われたりするのも嫌ですし………。
何より、そういう状況で別れたりしたら………本当辛いんですよ」
その辛さは身をもって体験済みだ。
自分の好きな人が違う女性と一緒にいるところを見かけるだけで嫉妬したりしていたあの日々。
更には別れた後、同じ部署のあの子と付き合うようになり、そんな二人の仲睦まじい姿を目の当たりにすることがどれだけ辛かったか………。
「なんで………別れること前提に考えるんだよ」
「普通考えますよ」
「そんなことないと思うけど」
呆れたように呟いた真田主任は「はぁ」と小さく嘆息した。
「ったく、あんな変な男と付き合うからこんなトラウマ植え付けられるんだよ。
あー、もうあいつ殴り倒したい………」
真田主任はそう言って眉間に皺を寄を寄せた。
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