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「真田主任はそういう経験がないから………」
「───だったら、十和田は会社を辞めればいい」
「………は?」
「そうしたら社内恋愛じゃなくなる」
そ、それはそうだけど………。
このご時世、この妙齢の女に再就職はちょっと……いや、かなり厳しい。
家賃だって払えなくなる。
なんだよその、俺様理論。
「恋愛するために仕事辞めるとか、ありえないです」
「心配するな。
ちゃんと再就職先は俺が責任を持って斡旋するから」
「・・・・・・」
真田主任は何か伝手でもあるのだろうか?
そう言われてふと考える。
小さい頃パン屋さんになりたかったことを思い出してしまった。
「………できれば、パン屋かケーキ屋だと嬉しいですけど………」
果たして真田主任はそういうお店にも顔が効くのだろうか?
「そうじゃなくってさ!
って、全然伝わんねーし!
………いや、別にパン屋で働いてもらっても全然構わないんだけど」
「?」
少し苛立ったようにブツブツ何か言っている真田主任に首を傾げる。
「だ・か・ら!
再就職先は、永久就職!!
もちろん俺のところに!!」
「って、え?
え、え、永久就職!?」
それって、それって………。
やっと言葉の意味を理解し、驚いて真田主任を見上げた。
真田主任は眉をしかめたまま………真っ赤になっていた。
「すぐに気付けよ………ったく。
人のプロポーズ軽く流すな」
「プ、プロポーズ!?」
赤くなって照れた顔をしている真田主任はどう見ても冗談を言っているようには見えない。
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