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「じゃあ、あれ全部あげるから、そっちちょうだい」
「は?って、も、もらえませんよ!」
「机に置いてくくらいなら義理だろうし、構わないんじゃね?」
問題は、義理だろうか本命だろうが、私なんかがそのチョコをもらったなんて知られたら後が怖いじゃない!!
ここでは女性一人で気楽だけど、女性同士の付き合いってなかなか難しいものなのよ?
っていうか、真田主任、何考えてんの?
これ以上ここにいて変なことに巻き込まれるのも後が怖い。。
「じゃ、じゃあ、私はお先に失礼します………」
私は立ち上がりカウンターの向こうにいる真田主任と課のみなさんにそう告げた。
「お疲れ!」
「また来週な~」
みんなの声を背に、私は通勤カバンと紙袋を手に課を出た。
去り際の真田主任のしかめっ面が………怖かった。
課を出てエレベーターのボタンを押す。
ここは4階。もう一階上の5階にはあの人がいる。
あの人と………可愛いあの子が。
7階から降りてくるエレベーターの数字をぼんやりと眺めた。
もう、よりは戻せない………。
分かっていたけど。
先月きっぱり振られたけど。
やっぱりまだ忘れられなくて。
でもあの人とあの子が仲良くしているのを見るのも辛かった。
だから今回の異動も二つ返事で了承したんだ。
それでもチョコまで買って準備するなんて………私って本当女々しい。
エレベーターの点灯が4階まで降りてきた。
開いたエレベーターには………。
「「「 ………あ 」」」
あの人とあの子が乗っていた。
なんという鬼なタイミング。
き、気まずい………。
乗るべきかそのまま見送るべきか………。
ほんの数秒で頭の中フル回転。
あの子があの人の腕をキュッと掴んだのを見て。
乗るのやめよう。
一歩後ずさった時だった。
「───乗ります!」
その声と同時に背中を押された。
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