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─────彼は私にベタ惚れしている。
* * * * *
「今日の合コン、マジ当たり!!」
合コン1次会終了後の居酒屋のトイレにて。
「ホント、全員イケメンだし、性格もいい!」
「4人全員があれだけレベル高いって、なかなかないよね」
いつもの合コンよりテンション高めの女友達を見ながらも………内心気が重い私。
「あれ?千景(チカゲ)、化粧直しは?」
来た時よりも入念に化粧を施している友達が鏡越しに私を見てきた。
一応私も皮脂押さえ程度の化粧直しはしているが、別にそれ以上取り繕うとは思わなかった。
「あー、私、二次会パス」
「えぇ!?あの税理士の彼、完全に千景狙いだったよ?」
「はは、まさか」
軽く否定して見せたけれど、私の真ん前に座った彼はかなり熱い視線を私に送ってきていることには気付いていた。
「何言ってんの!今の彼氏よりもいい男探しに来てるんでしょう?
あんな優良物件そうそうないよ!!
とりあずでもキープしとけば?」
盛り上がる女友達とは反対の冷めた態度の私に、三人は呆れ顔。
「う~ん・・・。今回はいいや。
そろそろ圭太(ケイタ)が迎えに来るし」
携帯で時間を確認する。
とはいえ、きっと圭太の事だ。既に店の前で私が出てくるのを待ち構えていることだろう。
「ほんと、千景って愛されてるよね~」
「毎回合コン会場の前まで迎えに来させるとか、どんだけドSだよ」
「ここまでされてもこんだけ千景のことを思ってくれる男なんてそうそういないよ?大事にしてやりなよ」
「「「 あの忠犬ゴリラ君 」」」
声を揃えてそう言った後、彼女たちはクスクスと笑いだす。
確かに、いかつい顔だちに鍛え上げられたムキムキの体つきはゴリラを彷彿とさせるけれど・・・。
「・・・忠犬って・・・」
「って、突っ込むべきは“ゴリラ”の方でしょ」
そう言ってまた彼女たちは笑った。
圭太は・・・私の彼氏。
今のところ。
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