717人が本棚に入れています
本棚に追加
ことの展開に付いて行けないのは私だけ?
一体、真田主任は何を考えているんだろうか。
真田主任が足を止め、私も立ち止った瞬間、
「ひゃっ……!」
膝の力が抜けてその場に崩れ落ちそうになる。
「わ、あぶなっ」
そしてそれを受け止めてくれる真田主任。
またあの香りが鼻先を掠めた。
膝から下が震えている。
それだけ緊張していたんだ、私。
異動してから………話をするのはおろか、あんなに近付いたのも久しぶりだったし、何よりあの子と二人一緒にいるのをあんな間近で見た衝撃は半端なかった。
支えてくれる真田主任のスーツをキュッと掴んだ。
「………悪い。余計なこと………した?」
切なげに顔を顰め、私の顔を覗き込む。
その端正な顔の近さに、私は慌てて手を放し距離を取る。
「い、いえ………ただ何が何だか分からなくて………」
グッと足に力を込め、なんとか一人で立ちすくむ。
自分を支えるように抱きしめた紙袋からミシリとチョコが軋む音がした。
少なくとも真田主任は、知っている。
私とあの人が付き合っていたことも。
私があの人に振られたことも。
あの人が私とあの子と二股かけてあの子を選んだことも。
───真田主任は知っている。
でも、何故………?
最初のコメントを投稿しよう!