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大切なものは
2月の気まぐれな春風の中
少しのびた黒髪と
背伸びして見上げるくらい
高い背中をつれて帰ってきた
セピア色にのびた駄菓子屋の軒先に
なっちはわたしを見つけると
赤点のテストに何か書きこんで紙飛行機を折る
それはわたしの肩に当たってフワリと着地した
手の中で踊る文字がにじんで揺れる
「ただいま いのり」
懐かしい笑顔に駆け寄ったわたしは
子どもみたいにグシャグシャに濡れた顔のまま
精いっぱいの笑顔で彼をむかえた
「おかえりなさい なっち」
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