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学校は離れてしまったけれど わたしはなっちとたくさん話しをした 町外れの廃ビル わたしたちのステージはあの頃よりも空に近づいていた 駄菓子をほおばりながら 部活をさぼった放課後の時間は なっちの星語りにまたたくまに過ぎていった でもそれは相変わらず 昴の星語り一辺倒で わたしはもっと他の星のことも教えてよってねだったけれど 「それしか知らないし いのりは天文部だろ」 なんて笑っていじわるを言う そのたびに わたしは夢のことを思い出したけれど 笑顔の奥にかくし続けた 彼が今度はもっと わたしの知らない遠い世界へ行ってしまうような気がして すりガラスに包まれたみたいに曇った空から降る雪が シンと音をたてて頬をすべりおちる 2月14日がやってくる わたしはおばあちゃんのシワシワの手にお金をわたして キレイな包装紙とラッピングビニールに あの涙型のチョコレートをつつんだ
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