まだ色を持たぬ小さなキセキ

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「かたじけない……」 「気にするでない。さあ、早よう飲め」 「ははぁ…」 ソファでくたばっている私に清海が差し出してくれたのは、冷たい水が入ったグラス。 そこには、最近冷蔵庫に常備されるようになったレモンスライスが1枚浮かんでいる。 私は素直にグラスを受け取って爽やかな水を口に含んだ。 さっきまでムカついて仕方なかった胃にそれは静かに染み渡る。 「一気に飲むでないぞ?」 「承知しております……」 こんなふざけた口調になっているのは、私の恥ずかしさを誤魔化すため。 言い出しっぺの私に付き合ってくれる清海は、相変わらず察しが良くて、とても優しい。 疲れて帰宅したダンナ様をドアを開け放したトイレで便器にしがみついたままお迎えしてしまったなんて……。 消えてしまいたいくらい恥ずかしかった!
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