まだ色を持たぬ小さなキセキ

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キッチンにはボウルやら泡立て器やらが散らかったまま。 そして、それらの用具と一緒に置かれているのはお菓子作り用のチョコレート。 「見ての通り、バレンタインのチョコレートでございます。 まだ、作り途中ですが……」 そう言ってから素早くおでこを隠そうとしたけど間に合わなかった。 清海の特技。デコピンが炸裂する。 「いったぁぁい!!」 「今年はいらないよ、って言ったのに!」 清海が私を厳しい表情で睨み付けていた。 そのいつもにはない剣幕に怯みそうになったけど、私も負けずに言い返す。 「だって!だって!だって!!」 連呼しながら私が指差していたのは清海が職場から持ち帰った大きな紙袋。 中には清海が予備校の生徒たちから貰ったチョコレートがびっしり詰まっていた。
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