まだ色を持たぬ小さなキセキ

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「子どもができたって分かったときに約束したこと覚えてる?」 「……もちろん」 「じゃあ、20文字以内で述べよ」 「お腹の子ども最優先」 「良くできました」 清海が私の顔を覗き込むようにして優しく微笑んでくれる。 それから再びゆっくりと話し出した。 「出産ギリギリまで仕事頑張ることは許したけど、絶対無理はしないって約束しただろ? 帰宅したらなるべく体を休めておけって言ったよな?」 「うん……」 「踊子さ、悪阻が辛い間は実家に帰ってもいいんだぞ? 何なら毎晩俺が迎えに行くからそれから一緒にここに帰ってくればいいし」 私の実家はこのマンションから目と鼻の先。 そういう選択肢は確かにあるだろう。 でも、私はゆっくりと首を振る。 「踊子……?」 「違うよ、甘えちゃダメだって遠慮したり、意地張ったりしてるんじゃないからね?」 眉を潜めた清海に私は必死に訴える。
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