まだ色を持たぬ小さなキセキ

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「ウメー、早く出てこーい」 蕩けそうな幸福に満ちた表情で、まだ平らな私のお腹を撫でる清海を見てると私まで幸せで泣きそうになる。 私たちの間に舞い降りた小さなキセキにはどんなに感謝しても足りない。 ……が、しかし。 顔の熱が治まったところで私はずっと気にかかっていたことを切り出すことにした。 「ねー、清海?」 「んー?」 「さっきから " ウメ " って何だろう?」 清海が「へ?」と目を丸くしながら顔をあげる。 「そんなのお腹の中の子に決まってるじゃない。 出てきてくれるまで、この子はウメって呼ぶことにしたの。 今でも踊子を付き合ってた頃の呼び方したいなー、って思うときもあるし、俺この子は女の子だと思うから」 ニコニコ笑いながら話す清海を私は唖然として見返した。
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