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放心したように突っ立っていると、清香がやって来た。
次から次にと思ったが、ちょうど昼休みが終わる時間だ。
「お疲れ」
すっかり冷えたカップに口を付けたまま、目だけで挨拶する。
「なぁに、疲れてんの?」
そう言いながら、清香はココアの粉と熱湯をマグに注ぐ。
「最近見ないけど、愛ちゃん元気?」
「……辞めるってさ」
「…………は?」
ぽかんと瀬乃山を見上げた清香は、マグを倒しそうになって湯を自分の指に掛けた。
「熱ッ……」
「危ねぇな、気を付けろよ」
瀬乃山が水道を捻ってやると、清香はおとなしく流水に指を突っ込んだ。
そのままじっと固まっている。
「辞めるって、なんで?」
うまい返事が思いつかず、瀬乃山は口を噤む。
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