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「もしかして……宮さん?」 流水音に隠れそうなほど、声を顰めて清香が囁く。 「何でそう思うんだよ」 「理由なんて他にないじゃない。どうせまたあの人が苛めたんじゃないの?」 「……何だ、それ」 瀬乃山の上ずった声に、清香は顔を上げた。 「……まさか、本当に知らないの?」 「え?」 「あの人に目をつけられたら最後、ここにはいられないのは有名な話よ。社長があの人のことを買っているのは知っているけれど、仕事ができることよりも、人間性が大事だと私は思う」 「まさか」 明らかに困惑する瀬乃山の前に、清香は背を正す。 「じゃあ、何で愛ちゃんは急に辞めるって言ったの。半年以上もこんな職場で頑張った、根性あるあの子が、何で私に挨拶もしないで辞めるの?」 瀬乃山は何も言い返せない。 認めたくは無いが、清香に理がある気がしてしまう。 しかし、愛羅と宮武は付き合っているのではなかったのか。
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