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「それとも何? まさか、あんたが手を出したんじゃないわよね?」
「ッ……」
清香の鬼の形相に瀬乃山の顔が引きつったのを見た途端、冷水を飛び散らせて清香の右手が瀬乃山の頬を引っぱたいた。
パンッ……と弾けるような音が鳴り響く。
「お前ッ……」
「あんた、それで恥ずかしくないの。よく私に顔見せられたわね」
清香の冷え切った右手の感触がまだ頬に残っている。
瀬乃山は頬を擦りながら、何も言えずに清香を見た。
清香は叩いた右手をそっと左手で包むと、労わるように瀬乃山を見上げた。
「……あんた無愛想だから、誤解があったんじゃないの。もう一度話してきなさいよ」
「無愛想って何だよ……」
ボソリと漏らした反論には答えず、清香はタオルで手を拭った。
「失恋したら、焼肉奢ってあげる」
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