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素早いノック音が響いて、ガチャリとドアが勝手に開いた。 いつも瀬乃山の方をチラリと見て、瀬乃山が頷くのを確認してからスッと音もなくドアを開けていた愛羅が、いない。 この一瞬だけでも不在が胸に突き刺さる。 入室したのは案の定、宮武だった。 この男が本当に……。 ぼうっと立ったまま宮武の顔をまじまじと見る瀬乃山のことは一向に介さず、宮武は普段通りにデスクに書類を並べる。 「こちらは17時からの会議資料、こちらは本日中に押印願います。それから」 言葉を止めた宮武と視線が交わる。 宮武は薄らと微笑んだように見えた。 「本日より私の席をこちらに戻します」 「え?」 「神崎さんは退職ということですので、以前のように私が彼女の仕事を担当します」 「……いや。まだ辞めると決まったわけではない」 瀬乃山は溜め息交じりに椅子に腰かけた。 愛羅がいなくなってからずっと、徹夜明けのように体中がだるい。 頭を抱えるようにして、デスクに肘をついた。
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