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右半身を床につけたまま、わなわなと唇を震わせ怯えた視線を巡らす宮武のすぐ傍まで行き、瀬乃山は立ったまま見下ろした。 「俺のためだ? ふざけんなッ!! 人のせいにして、人を傷つける奴は最低だよ。……俺はお前を絶対許さない」 「そんな……」 ブルブルと震える宮武は、殴られた左頬を押さえたまま、立ち上がれずにいる。 その様子に、あの日の愛羅の姿が蘇った。 ……あんなに震えていたのに! 俺はなんで助けてやれなかったんだ!! 瀬乃山は宮武のすぐ脇にしゃがみ込み、襟首を掴んだ。 「他には何をしたんだ?」 「……何も」 宮武の視線が忙しなく動く。 「本当か? あの日が初めてか? 俺のいない隙をついて、ここに来ていたんじゃないのか?」
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