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「妹さんには辞めてほしくない」
「そうおっしゃっていただくのは有り難いですけれど」
「お願いです。話をさせてもらえませんか?」
「でも」
「お願いします」
テーブルに突っ伏すように頭を着ける瀬乃山の後頭部では、抱えきれないほどの溜め息が降ってくる。
席を立ちかけていた麗美は、諦めたのか、もう一度座り直した。
「社長さん、妹が以前の会社をなぜ辞めたのか、ご存知ですか?」
「……いえ」
瀬乃山は少しだけ顔を上げた。
花蓮は、セクハラにあっていたのではないかと言っていた。
しかし、花蓮も詳しくは聞いていないとも。
「その男は知っていたようです。だから、妹が一番嫌なことをしたんだと思います」
「妹さんは、一体……」
顔を上げてくださいと言った後、麗美は重い口を開いた。
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