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「まあ、しばらく休んでからでもいいけど、ちょっとずつでも応募しなさいね」 「お姉ちゃん……」 久しぶりにそう呼びかけたら、子どもの頃のように心細くなった気がしたが、麗美は優しい表情で先を促す。 「私、これで本当にいいのかな?」 「これでって?」 「会社……辞めていいのかな……」 麗美はそっと愛羅の頭を撫でた。 「辞めたいほど辛いことされたんでしょ。いいよ。辞めちゃいなよ。また前の会社みたいになったら大変だよ」 答えない愛羅に、麗美はパッと立ち上がると元気よく声を掛ける。 「ほら、とりあえず寝なよ。もう、こんな時間」 「うん、おやすみ」 「おやすみ」 心配そうな麗美に、どうにか笑顔を作って自室へ戻る。 前の会社のように、またなってしまうのか。 宮武のしたことが広まって、奇異な目で見られたりするのか。 瀬乃山との関係がばれて、苛められたりするのだろうか。
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