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「君に訊きたいことがある」
荷物を纏め、さっさと辞そうとする愛羅を、瀬乃山が引き止めた。
社長室の扉はいつものように頑健に封じられており、誰に聞かれる心配もない。
久しぶりに二人きり。
外はすっかり日が暮れて、定時から時計が一回り回っていた。
愛羅を自席に座らせ、いつもは宮武が座っている社長席の隣のスツールを引っ張り寄せて、瀬乃山はそこに座った。
人一人分、何も隔てない距離に、愛羅は緊張を募らせる。
瀬乃山は自分の膝に肘をつき、指を組むと、下から見上げるようにしっかりと愛羅を見据えた。
「俺がしてきたことも、あいつと同罪だ。あいつさえ許そうとした君は、もしかしたら俺のことも許してくれるのかもしれないが、俺は自分を許せない」
瀬乃山の言葉に、愛羅は目を見張った。
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