*11

10/21
前へ
/181ページ
次へ
「当たり前だろ、君は何だと思っていたんだ!?」 「え?」 痛みに気を取られる愛羅を、瀬乃山が強く引く。 「君以外に俺が抱きしめたい人なんていない。君以外にキスしたい人なんているはずないだろ!?」 そこまで言い募って、初めて掴んだままの愛羅の手に気付き、パッと手を離した。 「……済まない。もう今日で君に会えるのが最後だと思うと……」 苦しげな瞳でじっと愛羅を見つめる。 愛羅もまた何も言えずに、茫然と瀬乃山を見ていた。 「ごめん……」 そう言って瀬乃山は、愛羅を抱き寄せた。 きつく、きつく。 苦し過ぎて愛羅は、そのまま指一本動かせずに胸に抱かれていた。 「君の気持ちさえ訊かずに君を抱いた俺を、俺は許せない。でも、君を離したくない。本当はどこにも行かせたくない。他の男に指一本触れさせたくない。宮武にも嫉妬で狂いそうだった。いつか街で見た、君の頭を撫でていた男にも。もう君に会えないなんて信じたくない。君がいないだけで、何も手につかないんだ。俺から……離れないでくれッ……」 「……そんな」 「ごめん」
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3204人が本棚に入れています
本棚に追加