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「当たり前だろ、君は何だと思っていたんだ!?」
「え?」
痛みに気を取られる愛羅を、瀬乃山が強く引く。
「君以外に俺が抱きしめたい人なんていない。君以外にキスしたい人なんているはずないだろ!?」
そこまで言い募って、初めて掴んだままの愛羅の手に気付き、パッと手を離した。
「……済まない。もう今日で君に会えるのが最後だと思うと……」
苦しげな瞳でじっと愛羅を見つめる。
愛羅もまた何も言えずに、茫然と瀬乃山を見ていた。
「ごめん……」
そう言って瀬乃山は、愛羅を抱き寄せた。
きつく、きつく。
苦し過ぎて愛羅は、そのまま指一本動かせずに胸に抱かれていた。
「君の気持ちさえ訊かずに君を抱いた俺を、俺は許せない。でも、君を離したくない。本当はどこにも行かせたくない。他の男に指一本触れさせたくない。宮武にも嫉妬で狂いそうだった。いつか街で見た、君の頭を撫でていた男にも。もう君に会えないなんて信じたくない。君がいないだけで、何も手につかないんだ。俺から……離れないでくれッ……」
「……そんな」
「ごめん」
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