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瀬乃山は再度、愛羅を胸に抱く。
「……ねえ、何で俺を拒まないの? あんなに怖い思いをして。俺はあいつと同じように……」
瀬乃山はゆっくりと愛羅の顔を離すと、その両頬に手を掛けた。
「……キスしようとしてるんだよ」
「全然、違います。私を……」
愛羅の顔が歪み、一際大きな雫が瀬乃山の指を伝った。
「私を、愛してくれているんでしょう?」
瀬乃山はそれを拭うと、愛羅の濡れる瞳を覗き込んだ。
「そうだ。君だけを愛している。君は、君を愛していれば誰でもいいのか? 君の優しさは男をつけ入れらせる」
「違います。私は全然優しくなんかないッ……こんなことを許すのは……社長、だけです……」
愛羅の消え入りそうな声に、瀬乃山は首を傾げる。
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