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「なぜ? 俺が社長だから?」 「……本当にそう思うんですか?」 瀬乃山は苦り切った顔で、自分の首を振った。 「分からない。君のこととなるとまるで、何もかも分からなくなるんだ」 その苦しげな瞳に、愛羅まで切なくなる。 「……教えてくれ、俺に。君は、俺をどう思っているんだ?」 愛羅の顔がはっきりと歪んだ。 この想いを伝えられる瞬間が来るなんて夢にも思わなかった。 気付いた時には、捨ててしまわなければならない思いだと自らをがんじがらめにしていた。 信じてはいけないと、心の奥が未だ怯えるが、瀬乃山の必死さがそれを封じ込める。 何より、自分自身が信じたくて堪らない。 そうだ。 私はこの人を信じたくて、愛したくて仕方ないんだ。 それでも、私はそれを端から諦めていた。 自分を縛り上げていたのは自分自身だったのかもしれない。 それを解き放つ勇気を今、瀬乃山に与えられようとしている。 ……本当に、言ってもいいの? 愛羅は震える唇に、そっと音を載せる。 「……好きです」 瀬乃山の瞳が見開かれる。 切なさに歪んでいた表情に、希望の光が灯りだす。 「好きなんです。出会った瞬間から、あなたに惹かれていました」 そっと触れ合ったお互いの唇は、小さく震えていた。
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