第1章

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 今朝の事だ。登校して窓際の自分の席に 着こうとした時、机の中に何かが入ってる。 昨日、忘れ物したっけ。中に手を入れる。  あ。箱だこれ。包装されている。リボンも。  そうだよ。今日は日本チョコ記念日だよ! 遂にktkr、17歳にして到来した春爛漫。  <17年間を振り返る。主に去年。>  思えば毎年、この日になると帰宅して最初に、 優しく笑顔でオカンが「仕方が無いわねぇ」と チョコをくれる。どうだった?と聞きもしない。  強制だ。でも、ありがとう。  それに比べて何故かモテる親父。会社でも 義理とはいえ数個は獲得する。平凡な包装は 「久太、美子、小次郎、おやつなー。」  ああ、キュウタは一応、俺で長男だ。  ミコはクソ生意気な中学2年。  コジロウは、甘えん坊の小学4年生だ。  ちなみに親父は別に甘い物が嫌いではないが オカンの前で食うと、オカンの機嫌が悪くなる。  うざいんだが、一番うざいのは妹の美子だ。  テレビから目を離さないまま小馬鹿にして、 食いかけのポッキー1本を投げて寄越す。 クソ生意気な妹め。でも食う俺。情けない。  昨年はピノ1個だった。チョコ量減ってる。 「そういう美子も、あげるような男いないだろ。」  言い終わる前に、タイムラインを見せられた。 中坊達が行列してるみたいな感じだ。 「ありがとうね!Wデー楽しみにね!」 「僕は、えっとその前から、あ、いや何でも。 今日は嬉しかったよ。」 「今日、貰った中で本当に心から受け取ったのは 美子ちゃんのチョコだけだから。」  この3番目の奴、引っ叩きたいと言ったら、 剣道と空手の有段者だと言われた。俺は静かに 部屋を立ち去ろうとした。  その時、小次郎に袖を引っ張られた。 何か泣きそうな素振りで、モジモジしている。 「お兄ちゃん、どうしよう。」  可愛いじゃないか。貰えない寂しさかな。 「ん?どうした?小次郎、何も気にしなくても こんなのはな、お菓子屋さんが決めた事でな。」 「違うの、YちゃんとMちゃんにチョコ貰って、 でも、僕はSちゃんが好きだから、断ろうって、 そしたら、帰り道でSちゃんが待っててくれて。」 「小次郎。お兄ちゃんな、宿題で忙しいんだ。 自分の道は自分で切り開いて行けよ。」    <回想、終わり。>  だが、この回想も終わりである。いまここに。 包装され、手触りからリボンも掛かっている。
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